「ジェットソンズ」（アメリカのTVアニメーションシリーズで、1962年から1963年にかけて制作）の空飛ぶ車ではありませんが、1980年代のTVシリーズ「ナイトライダー」のKITTは時代を先取りした車でした。改造されたポンティアックトランザムは、自動運転、インテリジェント音声通信、データへのリモートアクセス、外部電子デバイスの制御機能を備えた車輪付きAIスーパーコンピューターでした。これは、わずか40年前に視聴者を驚かせた広範な機能リストのほんの一部にすぎません。   

KITTはハリウッドのフィクション作品だったかもしれませんが、その機能の多くは現在、V2X（Vehicle-to-Everything）通信技術のおかげで実現されています。近年では、2019年のVWのGolf8を皮切りに、第1世代のV2X対応車が導入されています。Golf8をはじめとするそのほかの車両は、周囲の世界とのコミュニケーションを向上させるために、さまざまなセンサーやアンテナを搭載しています。 

しかし、さらに最近では、電気自動車（EV）双方向充電向けに新しいタイプのコネクティビティが登場しました。V2Xによるシグナルコネクティビティに、vehicle-to-grid（V2G）、vehicle-to-home（V2H）、vehicle-to-load（V2L）の方式を使用したパワーコンディショナーが追加されました。  

これらの新しいテクノロジーをどのように組み合わせて未来のEVを形成するのでしょうか? 

V2Xは「車の IoT」とも呼ばれ、vehicle-to-device（V2D）、vehicle-to-network（V2N）、vehicle-to-pedestrian（V2P）、vehicle-to-vehicle（V2P）など、豊富な通信サブカテゴリーで構成される広範な分類です。車内と車外の両方に配置されたV2Xをサポートするワイヤレスインフラストラクチャは、自動運転のフレームワークを提供すると同時に、衝突警告システム、アダプティブ クルーズ コントロール、駐車支援などの新しい安全性と利便性のある機能を実現しました。しかし、このインフラストラクチャを可能にしているものは何ですか?

モレックスレポート、「未来のコネクティビティを予測する: つながる世界を推進するイノベーション — 車両アンテナの過去、現在、未来を探ります。その中で、モレックスのグローバルプロダクトマネージャーであるFlorian Scherbelは、車両が1つのAM/FMロッドアンテナを備えたものから、約30個のアンテナを備えた次世代のコネクテッド車にどのように移行したかについて説明しています。それぞれが4G/5Gネットワーク用コネクティビティやV2X機能からBluetoothとの互換性、最終的には非地上系ネットワーク（NTN）や5G/6Gミリ波要素との通信まで、一意の目的を果たします。  

これらのアンテナの多くは、衛星、携帯電話基地局、センサー、スマートフォン、さらには他の車などのV2Xアプリケーションのコネクティビティをサポートし、可能にするよう設計されています。しかし、アンテナの多さは、エンジニアにとって外観とパフォーマンスの両方に課題をもたらし、最終的には次のような根本的な疑問につながります。 

車両の外観とアンテナの性能をどちらも損なわない方法で、より多くのアンテナを組み込むにはどうすればよいか?  

外観とパフォーマンスを維持および改善するために、革新的な非導電性材料と設計アプローチにより、アンテナを車両全体で隠し、シャーク フィンアンテナと組み合わせて使用することができ、車両のキャビンと車体を確実に合理化しながら信号の信頼性を高めることができます。 

V2Xテクノロジーによりシグナルコネクティビティが可能になりました。双方向充電によりEV向けV2機能の新しい時代が始まります。  

従来のEV充電は、EVが充電器から電力を供給するという点で一方向であると考えられます。つまり、一方向接続です。しかし、EVのパワーコネクティビティの未来は、車両が接続されたシステムから電力を取り出したり、接続されたシステムに電力を供給できる双方向充電になる可能性があります。プロセスは単純に聞こえるかもしれませんが、双方向充電では、伝送されるエネルギーが要件を満たしていることを確認するために、電力の品質と完全性が非常に重視されます。 

名前に多少の違いはありますが、vehicle-to-grid（V2G）、vehicle-to-home（V2H）、vehicle-to-load（V2L）という3つのテクノロジーが双方向充電を推進しています。 

Vehicle-to-Grid（V2G）とは?

V2Gは、EVがバッテリーからグリッドと電力会社にエネルギーを戻せるようにするテクノロジーで、車両をモバイルバッテリーエネルギー貯蔵システム（BESS）に変換します。これは、車両所有者のコストを節約し、グリッドに対する耐障害性の新しい手段を確立する上で役立ちます。 

V2Gによる充電コストの削減

EVがエネルギーをグリッドにフィードバックできるようにすると、車両所有者の潜在的なコスト削減、または利益への興味深い扉が開かれます。車両の充電に関連するコストはグリッドの需要によって異なりますが、早朝の方が安くなることがよくあります。V2Gテクノロジーを使用すると、EVは安価な時間帯に充電し、需要のピーク時にグリッドに売り戻しできます。 

V2Gによりグリッドの耐障害性が向上

専門家は、V2Gが完全に実現されるのは数年後と考えていますが、グリッドに冗長性を追加する手段としてV2Gテクノロジーの実現可能性を判断するテストが進行中です。実際、ニューヨークの学区では最近のテストが実施中で、電気スクールバスは、週末や夏期間など、需要は高まるが学校は休みであるなど、オフ期間中はエネルギーをグリッドに戻しています。 

一部の場所では、V2Gにさらに熱心に注目しています。最近カリフォルニア州で法案が提出され、カリフォルニア州のグリッドの欠点を軽減するために、2027年までに新しいEVにV2Gオプションを提供するよう義務付けました。

Vehicle-to-Home（V2H）とは?

V2Hテクノロジーにより、停電などでEVに蓄えられたエネルギーを家庭用電源として利用できるようになります。住宅構造物だけでなく、たとえば小規模なオフィスビルなど、より広範に使用される場合、このテクノロジーはVehicle to Building（V2B）と呼ばれます。

V2Hがホームオーナーにエネルギーの柔軟性を与える

V2Hは、緊急時のエネルギー源としても、全体的な自宅用エネルギー管理のアプローチの一環としても、EVのオーナーに大きなメリットをもたらします。嵐や送電線の故障、その他の原因で停電した時には、EVのバッテリーが緊急予備電源システムとして機能します。さらに、V2HはEVのオーナーにエネルギー消費をシフトさせる選択肢を与えます。電気の需要のピーク時の電気代が高くなる時などに、送電線ではなく車のバッテリーから電力を取るのです。

V2Hはまだ開発中のアプリケーション

V2Hの実現にはまだ時間がかかりますが、自動車メーカー各社は急速に導入し始めています。GMはV2Hイニシアチブを発表しましたが、V2Hを車両に対して可能にする機器の価格など、いまだに疑問点もあります。自動車メーカーは、このようなシステムを自社で販売するのか、第三者OEM提携会社に販売を委ねるのか（フォードF-150ライトニングとサンランの場合と同様に）を決断しなければならなくなるでしょう。

Vehicle-to-Load：V2Lとは？

V2GやV2Hは、より大きなシステムを動かす車両に焦点を当てていますが、V2Lは、EVが職場の屋外照明など特定のデバイスに電力を送ることを可能にします。

EVユーザーにポータブル電源を提供するV2L

車内でスマートフォンを充電するのは今や日常的な行為となりましたが、V2Lは、外部のデバイスに送電できる非常に大きな柔軟性を可能にします。緊急時には、V2LがEV車両をガソリン車の発電機と同じように作動させることができ、災害対策の優れた選択肢になり得ます。ピクニック、キャンプ、ドライブなどの屋外イベントなどの娯楽の場合は、電動グリルやテレビの電源としてV2L EVを使用することができます。業務用としては、建設現場の作業員がV2Lテクノロジーを使って工具を充電することができます。可能性は無限です。

V2Lの導入を阻むいくつかの障害

V2Lのコンセプトはシンプルですが、現状ではいくつかの制限があります。例えば、V2Lアプリケーション用のEVバッテリーを使用すると、バッテリーの摩耗や劣化が進む一因となり、可能な走行距離とバッテリーの寿命が短くなる可能性があります。さらに、コネクター、電気残量、通信のプロトコルに対するV2Lの基準はまだ策定されていません。その結果、EVモデルが異なると相互運用性の課題が発生する可能性があります。

車両のシグナルコネクティビティまたはパワーコネクティビティであろうと、品質と信頼性は一貫した信頼できるパフォーマンスの要件です。モレックスは、V2X用の最先端アンテナ通信、双方向充電用の高品質電源接続など、現在および未来の自動車アプリケーション向けの相互接続ソリューションの大手プロバイダーです。モレックスがコネクティビティの未来の進歩にどのように役立っているかの詳細については、コネクティビティの未来にアクセスし、レポートをダウンロードしてください。