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無人運転の未来に向けて推進

By Gary Manchester
Director of Advanced Technology and Market Development at Molex

未来の自動車は、現在の私たちが路上で目にしているものとは大きく異なったものになることには疑いの余地はありません。ほとんどのクルマが完全自動運転化していることはほぼ間違いなく、いずれすべてのクルマが完全自動運転車になるでしょう。実際、米国自動車技術者協会 (SAE、www.sae.org) は、完全自動化レベル5までの6ステージを詳細に定義したロードマップを既に公開しています。

ところで、ここまで明確に約束された完全自動化に至るまでのハードルとは何でしょうか?完全自動運転の未来を達成するには、車両設計のすべての側面において技術的に克服すべき課題が複数あります。例えば、完全自動運転おける制御システムの課題としては、安全性やセキュリティ、標準化といったものが挙げられます。ただしこの技術的な試練も、このシステムの開発にあたって生じてくる倫理やモラルに関する問いと比較すれば甚だ軽微な問題にも見えてきます。回避できないアクシデントに直面したとき、車両はどうふるまうのか?現代の自動運転車の制御にも、トロッコ問題 のような思考が求められています。

未来の車は、今日、道路を走っているものとはかなり違うものになることはほぼ疑いようがありません。すべてが完成した時点では、すべてではなかったとしても、ほとんどが自動運転になっているというのはほぼ確実です。実際、Society of Automotive Engineers(www.sae.org)はレベル5の完全自動運転車両へと導く6段階の進化の詳しく定義したロードマップを公開しています。

それでは、約束された終盤戦を実現するための障害とは何でしょうか? 運転者不要の未来を達成するためには、車両設計のすべての面において克服すべき技術的課題が多数残されています。たとえば、運転者不要の車両における制御システムの課題は、安全、セキュリティ、規格に関する事柄です。しかしこれらのシステムを開発する時に生じる倫理的道徳的命題に比較して、技術的問題は色あせて見えます。避けることのできない事故に直面したとき、車両は何を行うでしょうか? 現場での問題は、古典的なトロッコ問題の現代版のような板挟みの問題になります。

課題

完全自動運転化とするためには、将来の自動車にはデータを生成して処理解析し、車両の動作に反映させるための数百個のセンサーが搭載されます。これがうまく行けば、90%の交通事故はドライバーが原因で生じている (NHTSAの調査による) とされる路上の安全は間違いなく格段に向上するでしょう。

センサー

センサーは車両の周囲環境を知る最初のインターフェースであるため、安全性と信頼性の高い動作と高速かつ正確な解析能力が最も重要です。晴れた日の高速道路の走行では問題は比較的少ないですが、夜間の曲がりくねった道では、路面から得たデータが示すものが軽い水たまりなのか、それとももっと深い水のたまった穴なのかを見極めるのは遥かに困難です。変わりやすい天気も大きな課題の一つで、あるセンサーは大雨の影響を受けやすく、また別のセンサーは大雪の中で路面表示を読み取ることを苦手とします。

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通信

セキュリティ

自動車が「つながる」ようになれば、悪意のあるプログラムや外部からの攻撃を受けやすくなります。2015年、ジープがリモート攻撃を受けるデモンストレーションで、つながる自動車の弱さが示されました。このジープの例では、インフォテインメントとエアコンが攻撃を受けてエンジンが停止しました。同様の攻撃が電動化したスロットルやブレーキ、ハンドルに仕掛けられた場合を想像してみてください。リモートで発進させられた場合の被害は甚大になるため、自動車のシステム設計者にとってはセキュリティの問題は重要な課題になっています。

業界標準

初期の技術にありがちなこととして、各メーカーが、V2V通信に関する異なる標準を採用するということがあります。5GAAやIEEE等の組織は、V2X通信を可能にするようセルラー (5G) 規格やWi-Fi IEEE 802.11P / DSRC規格の作業を進めています。両技術とも、自動車のワイヤレス通信およびAVアプリケーションで用いられます。テクノロジー系企業の立場からは、どのようなテクノロジーが安全な運転のために最良のインフラストラクチャを作り出せるか、規格開発および法制化プロセスにおいてその判断に参加するという形で、役割を果たすことが重要になるでしょう。

通信関連の課題に焦点

車両へのV2X通信の実装に関しては、無用か無関係な情報でシステムに負荷をかけずに、適切なタイミングで十分な情報を提供して車載システムに取るべき挙動の判断材料を知らせることなど、3つの主な課題があります。つまり、任意のシナリオにおいて何のデータが重要でどれくらい早急に必要なのかを判断する必要があります。  

これから数年先、ほぼすべての自動車にV2X技術が搭載されたとき、路上の安全性確保においてこの技術が持つ確かな力が明らかになるでしょう。しかし同時に、V2X機能を搭載していない通信範囲の限られる古いクルマの存在によって、これらのクルマがV2X対応に置き換わるまではV2Xの完全な価値の実現は阻まれることになると考えられます。

コネクテッドカーは多くのメリットをもたらしますが、このクルマは外界とワイヤレスで接続された、攻撃に対する脆弱性をはらむクルマであるという事実に変わりはありません。そしてテクノロジーの統合が進むにつれ、危険も大きくなっていきます。5G携帯電話通信と無線 (OTA) での車両操作によって、自動車への接続性が向上するにつれ、攻撃ポイントの数も増加します。サイバーセキュリティは常に一歩先を行けるでしょうか?そうでなければなりません。結局の所は、業界内には特にセキュリティが破られたときのコネクテッドカーは危険すぎるという見解を持つ人もいるものの、V2Xはベネフィットがリスクを遥かに上回り十分なセキュリティは達成できるという意見が大半になっています。

既存のソリューションを検討する

これと並行して、ハードウェアのセキュリティ、例えば専用のハードウェアセキュリティモジュール (HSM) などを主要車両システムの要素に導入することでセキュリティ性能を高めることが可能です。

V2Xの課題に技術で対応

V2Xシステムの開発では、Wi-Fiとセルラーいずれの通信技術を用いるにせよ、複数のシステム要素が協調して動作する必要があります。このためシステムはハードウェアモジュール、ケーブル、相互接続、アンテナを含む全体として検討されなければなりません。広範な製品群と能力を擁するモレックスは、自動車メーカーにおける完全に統合されたV2Xソリューションの実現を助ける、独自のポジションにあります。

さらに、モレックスが誇る業界先端のRF技術を、同じく業界をリードするSmart Antennaソリューションに活用した、シングルおよびマルチバンドの「シャークフィン」型アンテナを、各メーカーのニーズに合わせてカスタマイズして提供しています。スマートアンテナ製品にはプロセッサを内蔵し、コネクターやケーブル、取り付け方法の構成変更が可能です。

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システム要素の最後はケーブルおよび接続方法ですが、これらはADASシステム関連の高速データ転送速度と狭い搭載スペースに対応して、継続的な性能向上が要求される要素です。モレックスは、マルチギガビット対応のコネクターと最新のEMC性能とシグナルインテグリティを備えたケーブルアセンブリーからなる広範なポートフォリオを揃え、様々な要件で高品質のコネクティビティを実現します。

将来、クルマは完全自律運転になります。V2Xから、センサー、モジュール、アンテナ、コネクター、ケーブルも含めた全体としてのシステム設計となって、この完全自律運転の実現が可能になり、皆にとっての道路の安全とセキュリティが向上していきます。安全でセキュリティを備えた自動運転システムにおいては、セキュアな相互接続が重要な要素になるのですが、モレックスの最先端の通信テクノロジーが、このような未来のクルマを実現するのです。

完全に運転者不要とするには、未来の車両には数百のセンサーが搭載され、生成されるデータはすべて処理され、解釈され、対応する必要があります。これが上手く行われれば、道路の安全性は計り知れないほど向上します。国家道路交通安全局(NHTSA)の調査によれば、すべての事故の90%が車両の運転者によって引き起こされているためです。

センサー

すべてのセンサーは車両の環境に対する主たるインターフェースとなり、安全で信頼性の高い運転と迅速かつ正確な解釈が最重要となります。晴れた日の高速道路の運転は課題も比較的少なくなりますが、夜間に曲がりくねった道で、データが示しているものが水たまりなのか、それとも水をたたえた深い穴なのかを判断することは、はるかに難しくなります。

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図1:V2Xシステムに接続する数十のセンサーデバイスを搭載する現代の車両

気候不順は最大の課題の1つで、一部のセンサー技術は豪雨の影響を受け、また大雪で道路標識の特定が困難になります。

コミュニケーション

通信は未来の車における主な機能になります。路車間(V2I)通信は空いている駐車スペースや電気自動車の充電ポイントを見つけることを可能にし、車車間(V2V)通信は近くの車両に互いにその意図を信号で知らせ、道路状況についての情報を交換します。実際、モレックスが依頼し、Dimensional Researchが実施した自動車業界の 最近の調査 では、モバイルデバイスの統合と、他の車との通信能力(V2V)が「未来の車」に予測される2大機能でした。

これらのV2Vネットワークは、運転者不要車両における高度な状況認識に大きく貢献します。しかし、異なるブランドの車両間での瑕疵のない実行のためには、すべての面での互換性のための規格が合意され遵守されなくてはなりません。これらの基準を定義するにあたって、どのぐらいのデータを(また、どのデータを)共有するか、また多すぎる情報を共有したときと少なすぎる情報を共有したときの利点と欠点を考察しなくてはなりません。

セキュリティ

車両は「接続」するようになるため、悪意のあるコードや潜在的な外的攻撃に対し脆弱になります。これは2015年に、リモートからの攻撃にどれほど脆弱になるかを示すデモンストレーションの一部としてジープがハッキングされた時に例証されました。この例ではインフォテインメントとエアコンが攻撃され、エンジンが切られました。エンジンスロットル、ブレーキ、ハンドルが「電子制御」となった場合の同じシナリオについて考えてみてください。潜在的な遠隔での乗っ取りは、壊滅的な結果を招く可能性があり、セキュリティは自動車システム設計者の重要な課題となります。

規格

初期段階にあるテクノロジーにおいて良くあることですが、さまざまなメーカーが、V2V通信のための異なる基準を採用しています。5GAAやIEEEのような組織は、V2X通信を可能にするためセルラー(5G)とWi-Fi IEEE 802.11P / DSRCの規格作成を行っています。どちらの技術も車載用無線通信とAVアプリケーションに重要な役割を果たします。テクノロジー企業にとって、安全運転のための最良のインフラストラクチャを作る技術を決定する規格策定と立法プロセスに役割を果たすことは重要となります。

通信上の課題に焦点を当てる

車両へのV2X通信の実装には主に3つの課題があります。これには、車両システムへ何をすべきかを適時に知らせることを可能にする十分な情報を提供しつつ、必要も関係のない情報でシステムを埋め尽くさないことが含まれます。これは、ある一定のシナリオにおいてどのデータが重要であるかと、どれほど迅速に必要であるかを判断しなければならないことを意味します。

これからの数年間で、(ほとんど)すべての車両はV2X技術を搭載するようになり、システムは成功とより安全な道路のための強い潜在的な力を示すでしょう。しかし一方でV2X機能のついていない、通信機能が限られている車は、長い時間をかけてそれらがV2X対応車へと交換されるまでの間、V2Xの価値を完全に実現する上で邪魔になります。

接続する車両は多くのメリットをもたらしますが、彼らが無線で外の世界とつながっているという事実そのものが、それらを悪意ある攻撃に対し無防備にします。そして技術の統合が進むほど、危険は大きくなります。車両への接続は5G携帯電話とOTA車両運転通信とともに増加し、攻撃ポイントの潜在的な数は増加します。サイバーセキュリティの進歩は一歩先を行けるでしょうか? そうでなくてはなりません。結局、業界の一部では、特にセキュリティが侵害された場合に接続する車両は危険すぎると言う意見がある一方で、大多数は、V2Xのメリットは、そのリスクよりはるかに大きく、適切なセキュリティは確保できると考えています。

既存のソリューションを検討する

このほか、専用ハードウェアセキュリティモジュール(HSM)を含むハードウェアセキュリティを、主な車両システム要素に導入することができ、これによりセキュリティを向上させることができます。

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図2:車両のセキュリティは通常のOTAアップデートを通して管理可能となる

V2Xの課題にテクノロジーで応える

V2Xシステムを開発する際、Wi-Fiまたはセルラー接続のいずれであっても、調和して動作するいくつかのシステム要素が必要です。この理由から、システムは、ハードウェアモジュール、ケーブル、相互接続、アンテナを含め全体として考える必要があります。幅広い製品と機能を持つモレックスは、自動車メーカーが完全に統合されたV2Xソリューションを提供する作業を助ける上で独自の有利な立場にあります。

さらに、モレックスの業界を先導するRFの専門知識は、業界を先導するスマートアンテナソリューションに活かされており、これには、メーカーのニーズにあわせてカスタマイズされることの多いシングルバンドとマルチバンドの「シャークフィン」アンテナも含まれます。スマートアンテナには統合プロセッサも含まれ、コネクター、ケーブル、取付方法により設定することができます。

最後のシステム要素は、ADASシステムに関連する高いデータレートと、現代の車両の曲がりくねったスペースに対応する、ケーブルと接続性です。モレックスは、要件に関わらず品質の高い接続性を推進する先進のEMC性能とシグナルインテグリティを持つマルチギガビットコネクターとケーブルアセンブリーの幅広いポートフォリオを提供します。

完全な自動運転車の未来 V2Xから、センサー、モジュール、アンテナ、コネクターおよびケーブルを包含するホリスティックなシステム設計への技術の進歩は、道路の安全性を改善し、すべての人のためのセキュリティの実現を可能にします。安全な相互接続は、安全でセキュアな運転者不要の車両の主要な要素であり、モレックスの最先端のコミュニケーション技術は、未来への前進において当社を有利な立場にします。