メインコンテンツにスキップ

次世代デバイスにフレキシブルで軽量な回路が求められる

製造テクノロジーに関して、最先端のデバイスとエレクトロニクスは限界に挑んでいます。プリント基板(PCB)が数十年にわたって設計を支配し、銅のフレキシブルプリント基板(FPC)は、強く望まれていた3次元(3D)機能を提供したものの大きな制限をもたらします。これに対応して、導電性インクにおける技術的な進歩により、設計者は代替品としてポリエステル上でシルバープリンティングを使用できるようになりました。

エレクトロニクス設計の未来を形作る

製造業界では、この10年の間に素晴らしい新技術が生まれました。精密レーザー裁断から3Dプリントにおける最近の進歩まで、エンジニアは次世代のコンスーマ向けデバイスを設計するために豊富な技術と素材を使用することができます。数量が少なくても複雑な形状を簡単に作成する能力は、電子デバイスの設計を変えました。これらの先進の技術により、機械制御、ウェアラブルデバイス、医療機器などの分野で顧客本位の設計の製造が可能になりました。しかし、これらの複雑な人間工学に基づく形状はエレクトロニクスの設計者に課題をもたらします。

エレクトロニクス設計者における第一のソリューションはPCBです。ここ半世紀ほどエレクトロニクス業界のバックボーンであるPCBは、マイクロプロセッサーが主流となった1970年代に人気になりました。PCBとマイクロプロセッサーがエレクトロニクス業界にもたらしたサイズの縮小は画期的なものでした。ほぼ一夜にして、それまで格納するにはビル1棟が必要であったコンピュータが机の上に置けるぐらいの大きさになったのです。

画像

PCB:50年以上にわたり業界を支配

PCBの支配(とその限界)

PCBの大量生産は簡単かつ安価であり、これは社会のすべての産業におけるPCBの支配において非常に重大なことでした。表面実装技術(SMT)コンポーネントの出現により、電子機器をさらに小型化することができました。その結果、PCBは今や台所用品から子供のおもちゃまで、先進の医療機器から人工衛星まで、あらゆる領域で使われています。

PCBは今日の進んだ電子機器にとって理想的なソリューションですが、まだ2次元形状に限定されています。PCBの構成は銅、ガラスクロス、エポキシの積層であるため、リジッドでもろいものです。従来の素材では3次元形状を作ることは単純に不可能です。

3次元のPCBを作るためのソリューションを探し求め、柔軟な誘電体路基板を作るため、エンジニアはさまざまな素材に変更しました。従来のリジッドな素材を柔軟な代替品に置き換えることにより、回路を折ったり畳んだりして複雑な形状を作ることが可能になりました。最も一般的なフレキシブル回路の選択肢はポリイミド箔です。

フレキシブル回路の構成

ポリイミドベース回路の構成プロセスは、従来型PCBに使用される方法に似ています。導電性を与えるため、回路基板に銅層が貼り付けられます。この層をマスクし、化学的にエッチングして、マスクされていない領域から銅を取り除くことによって最終的に回路のみが残ります。それからコンポーネントが配置され、従来の方法を使用してはんだ付けされます。

この引き算方式の処理により、多くの銅が除去されます。この非効率的な素材の使用は、比較的高コストのポリイミド箔との組み合わせで、銅FPCを高価なソリューションにします。FPCアプリケーションで頻繁に必要となる不規則な形状の回路の場合、これは特にあてはまり、素材利用率が低くなります。

ポリイミドの代替物を探す過程で、エンジニアは織物から不織繊維、ポリマー、はては紙まですべてを実験しました。多くの場合、回路を形成する導電層に適用される能力により、その利用は限定されてしまいます。

導電性インクの開発

しかし、最近の導電性インクの進歩により、設計者は銅FPCに対する軽量な代替物として、ポリエステル上へのシルバープリンティングを使用できるようになりました。導電性インクを使用した回路の構成は、従来の銅のエッチング手法よりもはるかに効率的です。こうしたインクの開発により、メーカーは0.127mmという細さのトレースを同サイズの余白で書けるようになり、これらのプリント回路基板は従来の高密度PCBと競争できるようになりました。

画像

フレキシブル基板としてのポリエステル

設計者は、アプリケーションによって代替基板素材への切り替えも実現できるようになりました。たとえば、携帯デバイスは合理的なコストで長期的な安定性を提供するためにポリエステルを使用しますが、単回使用の医療機器の場合、コストをさらに抑制し、廃棄時の環境への影響を小さくするために紙を使用することができます。

導電性インクの新たな進歩は、ボンディング技術の進歩と手を携えて進んでいます。フレキシブル回路に関する最大の問題の1つは、回路基板上へのコンポーネントのボンディングです。

確立しているテクニックは、導電性エポキシ樹脂を使用して、LED、コンデンサー、抵抗器などのコンポーネントを回路へ固定するというものです。これは細かいピッチでコンポーネントを回路基板上に装着するという制限をもたらします。

こうした制限は、複雑なデバイスをフレキシブル回路に装着可能にする新しいボンディング素材によって軽減されました。0.50mmという細いピッチを持つマイクロプロセッサーとその他の半導体コンポーネントがフレキシブル回路の一部を形成できるようになりました。

製造プロセスは、多層回路の作成を可能にするだけの十分な柔軟性を備えています。溶剤系インクは93度~149度という温度で数分で硬化するため、導電性インクは平らなシート上にも、ロール状に連続する基板上にもプリントが可能です。この方法を使用すると、さらに積層が可能で、より複雑な回路を作ることができます。

画像

シルバーフレキシブルプリント基板にボンディングしたLED、抵抗器、コンデンサーと集積回路

素晴らしい新たなアプリケーション

シルバーFPCは、あらゆるエレクトロニクスにおいて潜在的用途があります。そのメリットのため、シルバーFPCは銅FPCの代替としても、新しいアプリケーションへの革新的なソリューションとしても採用されます。

シルバーFPCは、その低コストと軽量性のため、ウェアラブルデバイスにおける用途が考えられます。このテクノロジーは、医療市場、フィットネス、ライフスタイルのアプリケーションや、ファッションの世界などにおける廃棄可能なセンサーデバイスに理想的です。廃棄可能な用途としてはほかにも、飲食業界におけるデータロガーやRFIDタグがあります。

これらの機能は、改ざん防止ボトルとその他のパッケージにおける壊れやすいセキュリティシールとしてのプリントシルバー回路の新しく興味深い利用法につながります。プリントシルバー回路は、白物家電やスマートホームデバイス、環境制御などの競争の厳しい家庭用電化製品市場のためのコスト効率の良いソリューションでもあります。

新しいエキサイティングな用途のためのソリューションとしても、既存テクノロジーのコスト効率の良い代替物としても、シルバーFPCは一連の優位性を提供します。そのコストの低さと軽量性、設計の柔軟性は、シルバーFPCのアプリケーションをエレクトロニクス業界全体、そしてその先へと広げていきます。シルバーFPCは最新の生産技術に必須の要素であり、エンジニアはスマート工場が提供する柔軟性のほとんどを提供できるようになります。