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モバイル市場を、ウェアラブルが再定義することになるのでしょうか?

リー・エトルマン
企業戦略および企業開発ディレクター

未来のモバイルデバイスを見据えると、フォームファクターではなく、何ができるのかが重要です。

現在でも、スマートフォンとウェアラブルまたはスマートグラスの間には歴然とした違いがあります。しかし、その境目は曖昧になっています。ディメンショナルリサーチが開催しモレックスが協賛した最近のグローバル調査によると、回答者の3名中2名が、2026年にはモバイルデバイスが現在のものとは大きく異なっていると見ています。さらに回答者の実に63%が、5年以内に従来のスマートフォンが、ウェアラブルや折り曲げ可能のデバイスなどの、まったく異なるフォームファクターに移行すると確信しています。

フォームファクターに関しては、回答者は様々なアプローチのウェアラブル(衣服やメガネ、イヤフォン、手首などに付けるウェアラブルなど)が台頭することは必至と見ています。

従来型のスマートフォンがしばらくは主流であり続ける一方で、課題もあります。機能性が拡大するにつれ、バッテリーの寿命の改善、カメラのアップグレード、高度な処理などの機能の進化に対応するために、携帯電話内部の「土地」に対するニーズはますます高まっています。米国やカナダのステークホルダーの大半が、未来の携帯電話は今より大きくなると考えているのは当然と言えるでしょう。

さらに、5GやWi-Fiのさらに速いバージョンが展開が続いて、通信能力が改善され数多くのデバイスに対応するようになれば、スマートフォンやウェアラブルの特殊な電子機器のニーズが高まります。

ウェアラブルは状況の見直しになるのか?

そのカギはアプリケーションです。実用的で便利なアプリケーションは製品設計を根本的に変えることに繋がり、テクノロジーの大きな進歩の原動力となります。医療業界のウェアラブルがその好例です。光センサー、人工知能、微小電気機械システム(MEMS)テクノロジーの画期的な使用に基づいた、幅広い種類の医療用センサーおよびフィットネス関連センサーが急速に発展し、様々な医療用アプリケーションに対する無数のウェアラブルソリューションが、既に可能となっているか、ほどなく可能になります。その例として、ECG/EKGによる心臓のモニタリングや、血糖値や血圧の測定が挙げられます。このような能力が、2026年の予防的ヘルスケアをどのように動かし、形作っていくのでしょうか?

Grand View Researchによると、ウェアラブル医療デバイスの世界市場の価値は2020年には166億ドル、2021年から2028年までに26.8%の年平均成長率(CAGR)に拡大すると予測されています。

現在時点では北米が市場を優位です。2020年の収益シェアは38.1%と最大で、これは北米での心血管疾患、糖尿病、がんの増加がその一因となりました。しかし、アジア太平洋市場が2028年までに指数関数的成長を見せることが見込まれています。これはこの地域での、政府による優先的な取り組み、高齢者層の増大、一般的なヘルスケアに対する支出の増加によって推進されるものです。

モバイル医療デバイスにおけるトレンド

2020年にストラップ、クリップ、ブレスレットが市場の主流であった中、最新のスマートウェアラブル開発では、マルチ機能を実現しており、モビリティ・呼吸器系・心拍数などのパラメータをモニタリングすることが可能となっています。

以前からフィットネス用リストバンドは、様々なスマートフォンアプリと同期し、着用者に健康およびフィットネスについてのアドバイスを提供するセンサーを装備するようになっていますが、これが今では、イノベーションを推進する医療グレードのウェアラブルとクロスオーバーしています。血中酸素飽和度のモニター、睡眠パターンの追跡、高度な心臓機能のモニタリングを行う能力を備えた、スマートウェアラブルの洗練と進化が進んでいます。

今後のモバイル医療デバイスには豊かなポテンシャルがあります。その中心となるのは、インターネットに接続したより良い患者体験です。

現在、消費者向け医療エレクトロニクスの真のデジタル化を示しているものに、心電図モニターがあります。心電図の読み取りをユーザーの臨床医に送信し、心房細動などの状態を検知できます。新参のカテゴリーであるウェアラブル血圧モニターは、あらゆる日常生活を通して血圧を追跡する対応範囲の広さを備えています。

現在、イノベーションの競争で優位となっているのはバイオセンサーです。これは、粘着パッチ、時計、リストバンド、ひいてはコネクテッドグラスの形態を取ることができるウェアラブル医療デバイスにおける、新しいトレンドです。バイオセンサーを用いると患者は、動きながら、心拍数・呼吸数・体温など、行動パターンと変数に関するデータを収集できます。

医療用ウェアラブルの増加傾向と追跡可能な健康指標の拡大により、患者のデータの収集と解釈が大幅に拡大すると予測されています。しかし、このデータには複雑さが伴います。実際、すべてのデータが収集・保管・伝送されなければならず、その結果、技術的な複雑さがさらに増しています。

ウェアラブル医療デバイスの健康上の利点 

このような健康およびフィットネス用ウェアラブルトラッカーを利用すると、データが直接簡単に手に入り、ユーザーは健康的な習慣を身につけて実践するために必要な透明性を得られるため、医療機関への通院や再入院の必要性が低減し、高騰する医療費の削減にも役立ちます。

医療用ウェアラブルには、遠隔診断やテレヘルスを可能にし、患者にとってもヘルスケア業界にとっても時間と費用の節約に繋がり、患者のモラルを高めるという大きな利点があります。

医療分野での深い経験を備えたモレックスには、この分野の臨床的専門知識があります。しかし、モレックスとの提携が他と一線を画すのは、数十年にわたってMedTechの領域でもそれ以外の領域でも、様々な業界の問題に対処してきた実績があることです。

世界最大のデータ・センターに対するソリューションの開発から、マイクロミニチュアモバイルデバイス、外科的ロボット工学に対する複雑なソリューションに至るまで、モレックスは、顧客が想像上の未来を現実にするための知見やスキルを備えています。

スマートグラス、スマートヘルス

2015年にGoogle Glassが消費者向けの生産を中止したとき、多くのコメンテーターは、スマートグラスのARの可能性は医療分野を含む、多くのアプリケーションで見出される可能性があると指摘していました。理論上は、スマートグラスはユーザーや患者に図・指示・情報画像・動画のストリーミングを提供することができ、その場にいながらにして、担当医との音声またはテキストのやりとりができます。また現在は、スマートグラスを複雑な手術で使用する可能性が探求・開発されています。

フェイスブックはレイバンと提携してRay-Ban Storiesに取り組み、シンガポール系米国企業であるRazer社からAnzu Smart Glassesを発売しました。これは多くの人々にとって、スマートグラスについて再考するきっかけになりました。Xiaomiは、ナビゲーションとライブ翻訳のARコンテンツの再生をサポートする、スマートグラスのコンセプトを発表しています。そして、堅牢で良好な医療用アプリケーションに対するポテンシャルがあります。ユーザーがスマートグラスを通して見ると、センサーが視線追跡などのテクノロジーを使用して逆にユーザーを見て、アルツハイマーなどの病気の兆候を早期発見するといったことが、可能になるかもしれません。

モバイルと医療の融合 

医療分野におけるモバイルテクノロジーの融合は現実になりつつあり、そこでは個人ユーザーが自分のニーズに最適なエコシステムを定義します。このビジョンは進化し未来は不確実ですが、進化することは必定です。その進化を見ることは心躍るものになるでしょう。